IACC連盟(ヨーロッパ・アメリカ・日本)、IACCメンバーの皆さん、IACCの学生の皆さん、そして名誉ゲストのみなさんこんにちは。
今日ここに、インターナショナル・アソシエーション・オブ・カラーコンサルタンツ・アンド・デザイナーズの50周年の記念式典に参加いただきましてありがとうございます。この中の何人かの方は、非常に遠い国々からはるばるとお越しいただいています。アメリカやカナダ、南アフリカ、日本などです。本当にありがとう。この瞬間は私にとって、とても特別なときです。それはこの独自の組織の総代表として仕事を続けて20周年の記念でもあるからです。
IACCカラーコンサルタントデザイナー、それは何を意味するか、またその歴史的な背景はどんなものなのか、これらの質問は私たちの仕事になじみのない多くの人々によく聞かれる質問です。まず始めに、カラーコンサルタントという仕事の始まりについてから説明をしましょう。1934年、私のよき指導者であるアメリカ人のフェイバー・ビレンは、応用カラーサイコロジーの父と呼ばれていますが、世界で初めて彼のシカゴのオフィスのドアに「フェイバー・ビレン カラーコンサルタント」と表示したのです。
ビレンは、第二次世界大戦の間、アメリカの軍需工場での事故の割合を劇的に低減させたのです。その理由は、多くの男性は戦争に出征し、工場労働者は未経験者ばかりが集められました。この当時の工場のカラーは、何の工夫もされていませんでした。これは現在においても世界中で未だに見られる現象です。
ビレンは、マーケティングにおいてカラーを有効に使うことに注意を向けました。それと同時に、特に人間が作り出した環境におけるカラーの用い方を研究しました。ビレンによると、「カラーはまるで、政治や宗教のようなものである。全ての人々は彼ら自身の意見を持っている。しかしながら、私は人間が自らの環境に現実にはどのように反応するか理解しようと試みている。そして、その研究に深く注意を払っている。」
その研究に彼が関与したことは、心理学、カラーサイコロジー、カラーの生理学的効果、ビジュアル・エルゴノミクス、サイコソマティック、そしてその他の関連した分野でありました。
このことは次のような質問を投げかけました。「カラーコンサルタントは、建築の環境に対する人間の反応ということに関して、幅広い知識をベースに教育訓練をするべきではないのか?」という質問である。人間の反応は単純にデコレーションに対してのものではなく、カラーの複雑な心理的・生理学的、そしてテクニカルな技術を必要とし、何が人間にとって適切であるか、また様々な問題を解決し提案できる能力を必要としているのではないか、トレンドのカラーデザインや、流行にしたがってカラーデザインをしてはいけないのではないか?といった質問が多く寄せられました。正しいカラーデザインとは、人間中心主義、人間を志向した究極のデザインの目標を立てて行うべきであり、それはアートとサイエンスの統合によるものであると考えます。これは、IACCのプロフェッショナルとしての哲学であります。
建築、とくに建築のインテリアにおいては、それは人間のために役立つものでなければならない。そのことはとくに、学校や働く場所、工場、病院などにおいていかに人間を重視することが大事かということでもある。カラーの心理的効果、生理学的効果、ビジュアル・エルゴノミクス、神経心理学、サイコソマティックなどについては広く深くカラーによる影響を受けている領域である。
例えば、高齢者福祉施設の例を取り上げてみよう。高齢者は、カラービジョンや光の量、コントラストの要因や空間におけるオリエンテーションなどについて充分に理解しておく必要があります。また同時に心理学的な領域も充分に理解しておくことが大切です。いかなる環境デザインにおいても、そのことは無視することはできません。しかしこれらのことは、充分に研究されたり、理解されたり考慮に入れられることがありません。フェイバー・ビレンや私(フランク)そして多くの優れたカラーコンサルタントは、これらの質問に対する答えを広い範囲から求め、人間のためによりポジティブな環境を作り出すことに深い注意を寄せてきたのである。
1985年までに、私は1957年に設立されたIACCと呼ばれるカラーコンサルタントの協会がヨーロッパに存在していることを知っていました。それはオランダのHilversumというところに、12カ国からおよそ50名にも及ぶ建築家、インテリアデザイナー、色彩教育家、心理学者、色彩心理学者、心理学教育者、科学者たちが集まりました。その目的は、真実のプロフェッショナル、カラーコンサルタントが絶対的に不足し、この分野における完全なる教育訓練が欠如していたため、それをおぎなう教育カリキュラムを作成することにありました。その初代の代表である著名なDr.ハインリッヒ・フレイリングは1948年にカラーサイコロジー研究所をドイツのMarquartsteinに設立し、また1920年代からカラーに関する心理学や心理診断テスト、芸術、マーケティング、哲学、生物学などに関する天才的な著作を創作した人物です。要するに、ゲーテのような世界的な天才でありました。彼は、建築やインテリアデザイン、心理学、芸術、デザインなどなどのエキスパートたちから、広く認められており、彼らから協力関係をもとめられたのです。そして、国際的な教育プログラムを確立し、それは「IACCディプロマの確立」へと続いたのです。
この教育プログラムは、最初は「インターナショナル・インディペンデント・カレッジ・フォー・カラー・アンド・エンバイロンメント」として知られていました。それから少ししてザルツブルグ、ここはヨーロッパの心臓と呼ばれていますが、そこがIACCの故郷となり、IACCの教育の為のコースが「ザルツブルグセミナー・フォー・カラー・アンド・エンバイロンメント」として発展したのです。今日このコースは、IACCアカデミー(フォー・カラー・アンド・エンバイロンメント)として知られています。
偶然に、大した意味もなく地方新聞を購入したところ、そこで私はカラーに関する記事を見つけたのです。それはDr.フレイリングとIACCの仕事に関する記事でした。私は、1986年にドイツのフレイリングの研究所で初めて彼に会う喜びを得たのです。私たちはカラーについてのあらゆることを話し合いました。もちろん、何が私たちの心を打ったかということについては、IACCのプロフェッショナルな哲学についての議論でありましたし、また不幸にも、アメリカにおいては,ヨーロッパ人のようにIACCの教育に参加できる人が大変少ないこと、それに関して、個人的な考えとしてIACCを広く世界に広げる試みをしたいといった内容でした。
Dr.フレイリングが言うところの「大きな池」を横切る橋を作るために、私は私自身の国籍のあった国アメリカのバイス・プレジデントに指名されました。私はIACCをプレスやラジオ、テレビといったメディアを通して紹介しました。1988年、Dr.フレイリングのIACCの代表としての30周年が経過した後、私にとっては大きな驚きでありましたが、フレイリングがその日をもって引退した後、新しいIACCの代表として私に続けてくれないかと尋ねたのです。
Dr.フレイリングの指導により、私たちはIACCの教育やカリキュラムを一部変更し、時代の変化に合うように修正しました。それによって、新しい内容となり、カリキュラムが更新されました。これは私自身も所属するIACCのエデュケーション・コミッティー、(教育委員会)の調整の元に行われました。メンバーは、Dr.ベッティーナ・ローデック、彼女はインテリアデザインにおける権威者であり、カラーデザイナーであり、色彩心理の研究家でもあります。またProf.エダ・マリー、彼女は国際的に有名な色彩理論家、芸術家であり、ココシュカ・スクールを卒業し、ウィーンの「カラーデザイン研究所」を最初に設立した人物でもあります。そして、Prof.ジェラルド・メールウィンは、ドイツのマインツにある「ユニバーシティ・オブ・アプライド・サイエンス」の教授です。また、建築家であり、インテリアデザイナーでもあります。彼ら主要な3人は、Dr.ハインリッヒ・フレイリングにより、IACCディプロマを授与されています。私たちに加えて、ザルツブルグにおける永遠なるレクチャーのために、私たちは国内においても国際的にも、その名を知られる様々な分野における人々の意見をIACCカリキュラムの内容に反映させることにしました。1988年、Dr.フレイリングと私は、BDF(ジャーマン・アソシエーション・オブ・カラーコンサルタント)を改名し、新しくBEF(ヨーロピアン・アソシエーション・オブ・カラーコンサルタント)とし、ヨーロッパのコミュニティをスタートさせることに同意しました。
1991年、私たちはノースアメリカにおけるIACCプログラムと教育を確立しました。これは、英語で行われる教育プログラムで、アメリカだけでなく、カナダ、ヨーロッパ全土、日本、韓国、マレーシア、オーストラリア、南アフリカ、エチオピアなどの世界中の英語を話す人々のために解放されたコースとなりました。これらの様々な国からの学生達の多くは、1993年に設立されたIACCノースアメリカのメンバーに現在なっています。
2000年からは、私たちIACCを日本に紹介した人物がいます。Prof.トシヤ・ハシモトに感謝します。彼は、「IACC・スクール・オブ・ジャパン・フォー・カラー・アンド・インテリアデザイン」を設立しました。2004年以降は日本各地にブランチが設立され、福岡を始め、近年では東京、京都、広島、札幌にも設立されました。
私たちはさらに、他の組織や研究機関と関係を広げそれらの教育の知識を採り入れるように努力してきました。私たちは、様々な組織と協力をしあい、IACCプログラムを世界に広げてきました。例えば、AIED(ミラノ)はIACCのコースを90年代後期に採り入れるようになりました。また、ポルトガルの「テクニカル・ユニバーシティ・リスボン」、これは建築の教育施設ですが、「建築におけるカラー」の主要教科を確立し、その内容はIACCのカリキュラムをもとに構成されています。そして私はそこで、主要な授業を行っています。
IACCプログラムは、IIDA・ASID・AIAによってCEU(コンティニュード・エデュケーション・ユニット=教育費支援)を受けています。私たちの学生の何人かは、例えば、ボストン・カレッジ・フォー・アーキテクチャーや、バークレーの卒業後のコース、その他の教育施設においてカラーについて教えています。
IACCの全てが一つになって、国際的にそのプロフェッショナルな業績を残しているのです。私たちは、NPOでありながら私たちのプロフェッショナルなメッセージに対し、いかに驚くべき熱狂や賞賛が寄せられ、デザインの世界に大きな影響を与えていることに、感謝をします。この感謝は、IACCのために努力をしている多くの個人に、また教育者達に、そしてIACCの委員会の人々に、また多くの卒業生や学生達に。彼らの熱狂的な賞賛が決して終わることがないことも私を驚かせています。
未来においても、IACCはこのパワーを持ち続けることでしょう。なぜならば、私たちは常にさらにIACCを作ることに努力を続けたり、建築家やインテリアデザイナーやカラーコンサルタントのデザインコミュニティーと協力関係を結んだり、また彼らの職業に幅広いアプローチが必要であることに気づいています。私たちは、他のカラーアソシエーションとも協力関係にあります。最も大切なことは、私たちは常に私たちのカリキュラムをアップデートしており、新しい発見それは科学的レベルによるもののみをカリキュラムに採り入れているのです。
みなさん、私の何十年にもわたる経験から、IACCは他の義務も果たすことができると誇りを持って言いたい。私たちの職業は、人間をサポートすることにあるというのが、私たちの方法論である。私たちの哲学は、「建築の環境デザインにおいて、人間こそが関心の中心である」ということである。1996年の私の本から引用すると、「デザイナーという職業は、美的な次元を超えて、人間の環境に対する反応についての知識にアプローチすべきである。もしこのチャレンジが受け入れられたのであれば、人間が作り出した環境と人間の環境を作り出す職業は将来において、輝かしい未来をお互いに作り出すことになるであろう。」
ご静聴ありごとうございました。私たちの学生の作品の展示会は、私が今述べたことをより視覚的に伝えてくれるものとなるでしょう。